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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(あ)477号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人鍛冶利一上告趣意第一点について。

所論は、訴訟手続違反を主張するものであるから、刑訴四〇五条に当らない。また、原判決は、第一審判決を事実誤認と認めた根拠として本件記録竝びに原審における事実調査の結果によったことを説示したに止り、原審が直ちに判決をすることができると認めた根拠は刑訴四〇〇条但書によった旨明らかに説示しており且つ現に原審の事実認定の証拠として第一審において取り調べた証拠も引用しているから、訴訟記録及び控訴裁判所において取り調べた証拠の外第一審において取り調べた証拠をも併せ審査した上直ちに判決をすることができるものと認めたこと明白である。それ故原判決には所論の手続法違反の点も認められないから、採ることができない。

同第二点について。

所論は、刑訴三三五条一項の適用を誤ったという主張であり、且つ、原判決は証拠説明に関する法律上の判断見解を何等示していないから、所論東京高等裁判所の判例と相反する判断をしたともいえない。されば、所論は刑訴四〇五条三号に当らないし、また、原判決の証拠説明は稍粗笨ではあるがこれを破棄しなければ著しく正義に反するとも認められないから職権で採用することもできない。

同第三点について。

しかし、原判決は、判示金員を本件犯罪の組成物件であるとしたのではなく、本件犯罪の組成物件たる粳精米(証一号)竝びに小豆(同二号)の換価代金であるとしたものである。そして、換価代金は法律上被換価物件と同一視すべきものでその対価ではない。されば、所論は、刑訴四〇五条に当らないばかりでなく、原判示に副わないものであるから、採用できない。

同第四点について。

所論は、量刑不当の主張であるから、刑訴四〇五条に当らないし、また、本件では同四一一条を適用すべきものとも思われない。

弁護人勅使河原直三郎の上告趣意第一点について。

所論は結局原審の裁量に属する量刑を非難するに帰する。

されば、上告適法の理由を定めた刑訴四〇五条に当らない。そして刑事裁判は各被告人の犯情によって量刑を異にするのが当然であるから、他の被告人に対する科刑乃至処分が軽かったからといって、被告人に対する量刑が全く不公平であるとすることはできない。それ故本件では同四一一条を適用すべきものとも認められない。

同第二点について。

所論の事由では原裁判所の組織、構成が偏頗や不公平があるとすることができないこと多言を要しないから、所論はその前提において採用できない。

よって旧刑訴四一四条、三八六条一項三号により主文のとおり決定する。

この決定は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 岩松三郎)

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